珈琲の酸味と苦み

水の状態で珈琲の味に影響がでるのはpHよりも硬度ではないでしょうか。水の硬度とは、水の中に含まれるカルシウム・マグネシウムの含有量を示す数値のことで、簡単に言えば軟水とは硬度成分(カルシウム・マグネシウム)の含有量が少ない水、硬水とは硬度成分含有量が多い水をさします。この鉱物質は珈琲の成分に含まれるクロロゲン酸類ととても仲良しです。成分同士が非常に結合しやすく、重たい味に仕上がります。例えば、普通の水を使っても鉄瓶で湯を沸かすと成分が水の中に溶けだし珈琲の味を変えてしまいます。そこから考えられる珈琲の焙煎と硬度の関係ですが、カルシウムは苦味を押さえる傾向にあり、マグネシウムは苦味、渋みを感じやすくさせます。(カルシウムとマグネシウム含有量の違いにより味のバランスは変化します)この事から深煎りで苦味の傾向にある珈琲はしっかりとした酸味の少ない味わいになります。逆に浅煎りの珈琲は酸味の強い傾向にあるため、酸味も感じるが苦みもあるといった複雑なバランスになります。

珈琲の苦みとは何でしょう。同じ銘柄の珈琲を他店で買うと味が違った。こんな経験はありませんか?そこでこんな疑問が生じます。「酸味を多く感じる店と少なく感じる店があるのは?」これはそれぞれのお店の店主が酸味にどうアプローチしているか?(・・もっともこれは嗜好、味覚に大きく関わりますが)で決まります。その味覚を決定するのはやはり焙煎によるものが大きいです。「珈琲の酸味は焙煎により作られます」が、焙煎が進むにつれ(焼きが深くなる)苦味が増していき、酸味の成分や感じ方に変化があらわれるからです。
珈琲の苦みのもとの一つは褐色色素です。
珈琲の生豆は焙煎によって色が変化していきます。生豆の最初の色は淡い緑色ですが、時間の経過とともに茶色へと変わっていきます。この茶色は少糖類、アミノ酸、クロロゲン酸類が主役となって作られるものでこれを褐色色素(総称)と呼びます。焙煎が進むにつれて少糖類がカラメル化、カラメル色素が作られていきます。この色素に少糖類とアミノ酸の反応によってできたメラノイジン(通称:コーヒーメラノイジン。化学反応の呼び名はメイラード反応)という色素が加わり赤褐色の色素が形成されていきます。さらに焙煎が進みタンパク質や多糖類も加わって百倍以上に巨大化した黒褐色の色素に変化していきます。
この色素の変化が珈琲の苦みを決めていきます。
つまり色素が大きくなる(焙煎が深入りになっていく)と苦みが増していき、その逆だと苦みが少ない味。ということです。焙煎が深入りになってくると苦みが増していくと同時に今度は酸の熱分解が始まり、酸味は減少していきます。単純に見た目で味の想像はつきますが、実際は飲んでみるまでは判りません。

2010 2月掲載