珈琲の香り

「珈琲は飲めないけど香りは好き」こんな言葉を聞く事があります。また、「お店の外まで香りがしたよ」とか。
珈琲には特有の香りがあります。この香りは何処からくるのでしょうか?珈琲を焙煎する前の生豆にはあの香りがありません。どちらかというと生臭い香りですが、上質の生豆になると甘い果実のような香りを感じさせてくれます。
珈琲の香りには「焙煎からくる香り」「珈琲豆を挽いたときの香り」「抽出時の香り」「抽出後、口に含んだときの鼻孔に抜ける香り」とそれぞれに違いがあります。あの香りは主として焙煎により作られます。焙煎時、豆の色の変化にメイラード反応が関与する事についてはすでに触れましたが、メイラード反応はなにも珈琲に限ったことではなく食品に熱が加わることによって起こる香りの形成はメイラード反応によります。珈琲の場合、どのような香りがどのように作られるかはアミノ酸の組織の状態、加熱条件で変化します。もちろんアミノ酸には種や栽培地、精選時の加工方法によって変わりますので、どの産地と種類を選ぶかによって香りも変わります。そしてこれは焙煎によっても(同じ豆を使用しても)焙煎時の上昇温度の変化、焙煎度でも香りは変化します。そしてカラメル化の時に漂う揮発性の酸の香り、甘い香りも重要な要素です。もちろん主成分のクロロゲン酸類も熱により香りが作られます。これら複雑な香りが絡み合って珈琲の香りが作られます。
この香りは焙煎後、変化していきます。最初は香味の強いいかにも「焼きたてです」という香りだったものがやがて柔らかな甘みを持った香りになり、徐々に香りが薄らいでいきます。この香りが漂うという事は実は珈琲の中に含まれる二酸化炭素と一緒に香気成分が出ていっていることを表しています。と同時に二酸化炭素が抜けていっているという事は珈琲に注湯したときに「膨らみが悪い」ということにつながります(焙煎から日にちが経過している)が、その事が個々の味覚の善し悪しを判断するものにはなりません。

2010 4月掲載