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スペシャルティコーヒー

スペシャルティーコーヒーという言葉は1978年、米国クヌッセンコーヒーのクヌッセン女史がフランスの国際コーヒー会議で使用したのが始まりです。
そのコンセプトとして(Special geographicmicroclimates produce beans with unique flavorprofiles)=(特別な気象や地理的条件がユニークな香味を持つコーヒー豆を育てる)というものでした。

単純明快のこのコンセプトは80年代のアメリカの急激なコーヒー消費落ち込みの救世主となりました。「スターバックス」です。スターバックスはヨーロッパの深入りのコーヒーを使用したエスプレッソという武器で瞬く間に人々に支持されていきました。その旗印が高品質の証「スペシャルティーコーヒー」でした。その後、アメリカはたった10年でそれまでの「低品質コーヒー大国」から「高品質コーヒーの先駆」にまで成長しました。
この背景にはコーヒー生産国の生産性向上のための品種改良が問題点です。

世界中のコーヒー生産国がおこなった生産性向上のための品種改良は必ずしも味覚面の品質向上とはならなかったということです。豆の見た目は良いのですが、見た目と味が釣り合っていない見かけ倒しのコーヒーが横行していたという事実があります。そこで消費国の在来品種見直しの声が高まりました。スペシャルティーコーヒーの定義は各国のスペシャルティーコーヒー協会に委ねられています。参考までにアメリカスペシャルティーコーヒー協会(コーヒーを消費する側の評価基準)の大まかな基準を挙げます。

1)豊かなフレグランス(焙煎後のコーヒーの香り、挽いたときの香り)は あるか。
2)豊かなアロマ(抽出したコーヒー液の香り)はあるか。
3)豊かな酸味はあるか。(豊かな酸味は糖分と結合してコーヒー液の甘みを増加させる)
4)豊かなコク(コーヒー液に濃度と重量感があるか)があるか。
5)豊かな後味はあるか。(飲んだ後、もしくは吐き出した後の風味をどう評価するか。)
6)豊かなフレーバー(口蓋でアロマと味わいを同時に感じることで香味を関知する)があるか。
7)バランスはとれているか。

また、生産国側におけるスペシャルティーコーヒーの評価基準ですが。

1)コーヒーの品種は何か。(アラビカの在来種、ティピカ、ブルボンが望ましい)
2)どんな栽培地で育てられるか。
(栽培地、農園の標高、地形、気候、土壌、精製法が明確に特定されているか)
3)高水準の収穫、精製がおこなわれているか。
完熟豆の比率を高め、欠点豆の混入を最小限にとどめているか

今までの豆の評価基準は外見上の見てくれ(スクリーン)や欠点豆の混入率で決められていた。
ここに味覚状の評価を導入したところが鍵となります。
このようにスペシャルティーコーヒーの基準は高く、もちろん自然と水準が高くなるのは判ります。しかし、ここで危険なのは「スペシャルティーコーヒー」を使っていることに対する安心がすべてを満たしてしまうということです。

スペシャルティーコーヒーを扱う業者(個人自家焙煎店)のコーヒーに対する知識や腕、味覚がなければいくら良い豆でも生かされません。豆を選択する基準が単純に(高品質)=(高価格)で選んでしまう…ということもあるのではないでしょうか?


珈琲と健康:2

薬用植物として明治19年から昭和26年まで日本薬局方に登録されていました。なぜ無くなったか?珈琲の有効成分はカフェインで日本薬局方にカフェインが収載されたから必要ないとの理由からでした。カフェインがもたらす薬効として有名なのは覚醒作用、その他に喘息、パーキンソン病があります。また、珈琲とがんの関係を国立がんセンターが大規模調査を行いました。「珈琲には肝がんを半減させる効果がある」という報道が2005年にありましたが、これは珈琲を一日に摂取する杯数から発症率を調べる方法で「毎日5杯以上飲む」と答えた人の発症率は四分の一以下という結果でした。そのデータから検証すると、なんと珈琲には抗C型肝炎ウイルス作用があり、C型肝炎が肝がんに進展する発症率を大幅に押さえる作用が確認されています。珈琲が肝臓病の特効薬かもしれないという可能性が見えてきています。そして主要成分の一つ、クロロゲン酸には糖尿病予防効果があり、毎日6杯以上飲むと発症率が男性で半減、女性で30%減少するというデータが出ています。糖尿病やメタボリックシンドロームは現代の悩める病気ともいえます。そして深刻なのは糖尿病が引き起こす合併症にあります。心臓病や肝臓病、網膜症など。それらが進行すると人工透析を受けるようになってしまいます。もし、珈琲を飲む習慣があれば未然に予防する効果が期待できるのです。もちろん個人差はあります。統計的な目安として珈琲は糖尿病を予防、糖尿病が心血管病を進むことを防いでいます。が、珈琲と心血管病との関係は一日5杯以上摂取すると逆にリスクが上がります。あくまで統計的な目安で個人差があるのでそれぞれの無理のない範囲で飲めばよいと思います。美味しくて、リラックスできて、病気が防げるなら飲まないより飲んだ方が良いと思いませんか?ちなみにいつも思うのですが、珈琲関係者にはどういった訳か太った人は非常に少ないです。

2010 11月掲載


珈琲と健康:1

医食同源・・医療も食事も健康保持に重要で、その源は同じであるということ。珈琲は世界の日常的飲み物として私たちのすぐ側にあります。常習性のあるこの飲み物はしばし議論の対象になります。「はたしてこの飲み物は体に良いのか悪いのか?」古くは14世紀からこの論争は続いています。実は近年の疫学調査の質と量を見ると珈琲ほどきちんと調査された食品は他にありません。厚労省が「特定保険用食品」通称「トクホ」を定めています。定義によるとトクホを販売するには有効性、安全性について科学的根拠を示し、国の審査及び許可を受けなければいけません。トクホの特徴ですが、普通の食品からは摂ることが難しい成分でもトクホを使えば簡単に摂れるということです。しかしトクホの有効成分は必須栄養素ではないので摂らなくても欠乏症にはなりません。つまり病気を予防するという確かな証拠は不十分というわけです。何故か?安全第一と言うのが基準となるためです。実は珈琲には病気予防効果があり、メタ解析(すべてのデータをまとめて再評価した論文)で検証されている有力な予防効果として1:2型糖尿病2:肝臓ガン3:アルコール性肝炎4:パーキンソン病があり、メタ解析はないが大いに期待できるものとして5:肥満・メタボリックシンドローム6:アルツハイマー病7:大腸ガン(女性)8:通風が上げられます。これらはすべてトクホよりも信頼性の高いデータが元になっています。珈琲成分の何がこれらの病気予防になるのか?それは今まで説明してきた成分・・カフェイン、クロロゲン酸、メイラード化合物などが関与するのです。気を付けていただきたいのは珈琲を飲めばこれらの病気が治るのではなく、予防に大いに役立つことができる。と言うことです。では説明していきましょう。まずは体にとって悪役扱いのカフェインですが、カフェインは体にとって有効成分であることが判明してきています。もともとコーヒーノキは、

2010 10月掲載


珈琲と情報:2

どんな本(雑誌?)を見たか判りませんが正しく情報から来る味への期待感と判断です。私は「情報源から取り寄せて飲めばいいのに」と思ってしまいます。質問者は期待通りの味に満足することでしょう。当店のメニューでブレンドは番号で名付けています。なぜならば「モカブレンド」と書いたとするとその文字情報は脳から過去の味を検索、比較し、飲んでもいないのに味覚を判断されてしまう。お互いに非常に残念だからです。

私は名の通った店で修行したわけでもなく、誰かを師事したわけでもなく、焙煎も独学で行いましたので、無名である私の「情報から来る味への期待感」そのものに期待していません。最低限の情報公開だけで後は飲んでくださる方に判断してもらうように努めています。結局の所、私が美味しいと判断したものしか提供していませんので味の押し売りであることは事実です。・・・ほとんどのお店が結局の所そうだと思いますが中にはユニークなお店もあって自身の味覚を丸投げした「これは師匠の所から取り寄せた云々・・」といったお店が存在しますが、自分の味を提供したいから独立したんじゃないの?と思ってしまいます。このように提供する側の味覚すらも情報は支配しています。でも好きな食べ物ならあまり惑わされないかもしれませんね。私はトマトが好物ですが、見た目が美味しそうでトレサビリティー(産地、生産者が明記されている)のハッキリしている商品を購入し、食べてみたところ「・・おいおい、写真で顔まで出しちゃってるけど大丈夫か?」と生産者の今後を心配してしまう商品に当たるときがあります。今後その顔写真の商品は手に取ることはありません。間違えて買うことがなくなったという利点はありますが。

情報で安心させることは商品を販売する上での戦略とも言えそうです。珈琲では「有機栽培」「スペシャルティーコーヒー」「フェアトレード」等、肩書きが多くありますが私の選択基準は飲んでみて美味しいか?ウチの商品として有意義か?で判断しています。

2010 9月掲載


珈琲と情報:1

人は「目で食べ、耳で飲む」生き物だと思います。これは実に文化的行動だとも思います。例えばブランドという情報は心を魅了します。「フランスの名門料理店で修行したシェフ」・・・たとえそこで3ヶ月間だけ皿洗いしていてもなんだか美味しそうです。「最高級製造機で作る○×」・・・正確には人が作ります。道具は手助け。でも食べてみたいですね。と、このように口に入る前に私たちは情報から脳を準備しています。身近な例だとアメリカの大手コーヒーチェーン「緑の珈琲牛乳」はちょっと高めのこだわり珈琲をその場所で注文しているのが知的行為という差別化に成功しました。

いままでメニューではマイナーだった(カフェラテ)をここまで身近な飲み物にしてしまった。そして珈琲ブームを作ったのは業界にとって功績と思っています。話は逸れましたが現代人はおいしさと言うものを判断するのに外部情報に頼る傾向があるのは確かです。暑い夏の日、喉がカラカラになったときに飲む水。これは生理的に美味しいと感じます。長期海外出張から帰ってきて家庭で食べるご飯。「やっぱりこの味っ!」食文化の美味しさです。本能から来る油脂、甘味、アミノ酸などのうま味に快感を強く生じた食品。やみつきを誘発する美味しさです。そして安全、価格、産地などの情報が味覚の処理に強い影響を及ぼす現象。情報から来る美味しさです。情報の美味しさは習う美味しさとも言い換えられます。その筋の権威が「これぞ本物」といえば食べたことがないものでも(たとえ苦手なものでも)食べてみたいと脳が判断します。好きな俳優や歌手が「おいしい」と言ったものは「おいしい」に決まってます。たとえ口に合わなかったとしても否定的なことはあまり言わないと思います。

昔では考えられなかった事ですが最近「○□農園のコーヒーありますか?」という質問がありました。「この中でティピカ種はどれですか?」と言う質問もありました。非常に興味深い現象です。

2010 8月掲載


珈琲の抽出

これまで説明したことは科学的視点がほとんどでした。珈琲の味はある程度、理詰めで説明できます。しかし人の手が加わる所ではなんとも・・アナログな飲み物です。世界中の人々がこの不可思議な琥珀色の液体に魅了され生産されています。ではここで珈琲の抽出についてお話します。これまでの説明分野はパッケージングされる前までの話であって、買って帰って考える必要はありません。お店に任せておけば良いのです。「じゃあ家では何が出来るの?」抽出で珈琲の味はある程度調整できます。1)抽出前に豆を挽く・・・珈琲豆は香りのカプセルです。香り、風味は挽き立てにあります。2)粉の大きさ・・・細かければ足の遅い苦み成分が抽出されやすく苦みが増します。大きければ足の速い酸味成分が先に抽出されます。そこでバランスのあった砕度を見つける必要があります。3)湯温・・・湯温が高いと珈琲のすべての成分は早く出ようとします。湯温が低いと成分は出にくいので抽出時間を長くすれば味に変化が付きます。大まかに注意すべき点はこの三点です。後は粉の量と抽出量さえ整えばおいしい珈琲がご家庭でも楽しめます。抽出へのいろいろな工夫は発見の喜びと楽しみがあります。ぜひ見つけてみてください。それでも美味しく感じられない場合、お店を変えた方が近道です。珈琲は嗜好的な飲み物です。根本的な愛称は存在します。つまり珈琲に「絶対」は無いのです。「この店の珈琲は日本一の味だ・・」それはその方の人生経験と知識と嗜好が判断することなので(これはなにも珈琲ばかりには限りませんが)自分に合わなかったら合わないで良いと思います。「おすすめって聞いてきたけど私には合わなかった」・・・正解です。これにこそ喫茶、珈琲文化があります。「A店のマンデリンは旨いね〜、コロンビアはB店の方が好きだな〜。」「あの店はネルドリップで美味しく点ててくれるんだよ。」「あの店のケーキはブラジルと相性抜群。」これも珈琲の楽しみ方、味わい方。
2010 7月掲載


珈琲のコク:2

実際の所、「コク」にはつかみきれない部分が沢山あります。それは食感や香り、風味、そしてその食品に関して学習したことや連想。これらが脳内でもっと広がり、抽象的なことがらや精神性などにも結びついていきます。これらを統合したものが「コク」の正体です。だから人にもあてはまりますし、味覚では全く異なる食品にも共通してコクを感じさせるのです。・・・随分と前置きが長くなりましたが、では「珈琲のコク」とは何でしょうか。私はコクのある珈琲を説明するときモカ種に「コク」を当てはめます。特にイエメンモカには他の珈琲産地にはない複雑な味わいを感じさせてくれます。一本調子ではなく飽きのこない味わいに奥行きを感じます。「ボディー」との違いは飲んだときに舌の上に感じる重みが「ボディー」であって、飲み終わった後に感じるものではないので区別しています。一本調子ではない、そういった意味ではコクを感じやすく飽きずに飲み続けられるのはブレンドかもしれません。しかし珈琲には前回説明した三大栄養素など含まれておらず、カロリーもブラックでは1〜2kカロリーとエネルギーとしては貧弱です。しかも人は苦みに敏感です。苦みの受容体は30種類ほどあり、うま味、甘味に比べると異常とも言える厳重な備えです。何故か。それは味覚として苦みと酸味は毒物かもしれないからです。ここに冒頭で説明した精神性が重要な位置を占めていきます。もちろん味覚や香りが入ってきてから後の話となりますが・・精神性の面からは例えば同じ珈琲を使っていたとして方や産地に何度も足を運びカウンター業30年以上のベテランのお店と始めたばかりの一年生だったらどちらが美味しく感じると思いますか?抽出技術は同じと仮定します。同じ珈琲を使用していると知らなかったらならおそらくベテランの店で「コク」のある珈琲を飲むことを選ぶでしょう。そうです「コク」の一部にはこのような情報も含まれるのです。

2010 6月掲載


珈琲のコク:1

「コク」日常でよく耳にする言葉です。「コクのあるスープだね」「コクのある奥深い味わい」「サッパリしているようでいて後味に何ともいえないコクが広がる」とか。
なかには「あの人はコクのある人だ」「人生のコクを感じさせる名演奏」など、時として味だけにとどまらず人を表すときにも使ってしまいます。CMなどでもよく目にします。私たちは「コク」と聞いて「美味しそうだな」と想像してしまいます。ではこの「コク」って何でしょう?
説明できますか?実はこの「コク」には科学的アプローチがあまりなされていません。一言では説明できない複雑な分野なのです。なぜならコクは口に入れた瞬間に感じるものではありません。甘味や塩味、辛みなどはすぐに感じることができますが、コクは時間をおいてジワリと感じるものだからです。簡単に説明できない味覚に遭遇したときコクを感じませんか?ただ甘いだけでなく複雑な甘味を感じたときとか。「たくさんの味が混ざっている」この感覚もコクを説明するキーワードです。しばし「ボディ」と表現される感覚も重要です。実は生物にとって本能的に美味しさを感じる条件があります。つまり生命維持に関わるもので「タンパク質」「脂肪」「糖類」この三大栄養素は簡単に説明すると「うま味」「油脂」「甘味」です。これらは無条件に(本能として)美味しさを感じる味わいです。身近なものでコクを感じるものを説明すると卵などは油のエネルギー、ミネラルやビタミン、タンパク質。まさに完全栄養食品。卵にはコクを感じます。まさしくこれは本能からくるコクの欲求です。例えば牛丼は「うま味」を調整したダシに「油脂」である牛肉、そこに完全栄養食品の卵を落とせば「やみつき」になるのは実に当たり前の現象ともいえます。砂糖とうま味の組み合わせのバリエーションとしてすき焼きなども同じですね。卵をくぐらせなくては美味しさも半減です。つまりは「複雑な美味しさの味わい」=「コク」というわけです。しかしそれだけではありません。

2010 5月掲載