珈琲と情報:1

人は「目で食べ、耳で飲む」生き物だと思います。これは実に文化的行動だとも思います。例えばブランドという情報は心を魅了します。「フランスの名門料理店で修行したシェフ」・・・たとえそこで3ヶ月間だけ皿洗いしていてもなんだか美味しそうです。「最高級製造機で作る○×」・・・正確には人が作ります。道具は手助け。でも食べてみたいですね。と、このように口に入る前に私たちは情報から脳を準備しています。身近な例だとアメリカの大手コーヒーチェーン「緑の珈琲牛乳」はちょっと高めのこだわり珈琲をその場所で注文しているのが知的行為という差別化に成功しました。

いままでメニューではマイナーだった(カフェラテ)をここまで身近な飲み物にしてしまった。そして珈琲ブームを作ったのは業界にとって功績と思っています。話は逸れましたが現代人はおいしさと言うものを判断するのに外部情報に頼る傾向があるのは確かです。暑い夏の日、喉がカラカラになったときに飲む水。これは生理的に美味しいと感じます。長期海外出張から帰ってきて家庭で食べるご飯。「やっぱりこの味っ!」食文化の美味しさです。本能から来る油脂、甘味、アミノ酸などのうま味に快感を強く生じた食品。やみつきを誘発する美味しさです。そして安全、価格、産地などの情報が味覚の処理に強い影響を及ぼす現象。情報から来る美味しさです。情報の美味しさは習う美味しさとも言い換えられます。その筋の権威が「これぞ本物」といえば食べたことがないものでも(たとえ苦手なものでも)食べてみたいと脳が判断します。好きな俳優や歌手が「おいしい」と言ったものは「おいしい」に決まってます。たとえ口に合わなかったとしても否定的なことはあまり言わないと思います。

昔では考えられなかった事ですが最近「○□農園のコーヒーありますか?」という質問がありました。「この中でティピカ種はどれですか?」と言う質問もありました。非常に興味深い現象です。

2010 8月掲載